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「弟子を失ったからか?」
その言葉にクルドはハッとした。
クレイシスは言葉を続ける。
「オレはこんなところで死ぬ気はない。ここで死んだら家名の恥だ。プライドを持って全力で奴と戦い、そして生き残る」
「クレイシス……」
「それに、モーディ・リアンには一つ言っておきたいことがある。だからここはオレに任せてくれないか?」
頼みを言われ、クルドはそれ以上の会話を止めた。
それを了承と受け取り、クレイシスはその場から一人で歩き出した。
道化を誘い出すように。
壁際を沿い、ある一つの絵の前で足を止める。
すると、どこからかモーディ・リアンの声が広間に響き渡った。
「裁判者の言うことにはきちんと耳を貸すべきだ、クレイシス伯爵」
虚空から姿を現し。
道化はクレイシスと距離を置いて、そこにふわりと降り立つ。
にこりと笑って、
「まぁ耳を貸したところで死ぬことに変わりはないのだけれど」
そう、くつくつと肩を震わせ笑う。
クレイシスは苛立ちを拳に変えると、八つ当たりするかのごとくそれを手短にあったモーディ・リアンの絵画に激しく叩き付けた。
「いいかげんにしろ、モーディ・リアン!」
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