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「嘘だ、そんなの……。信じない、信じないよ。展覧会で僕の絵が認められさえすれば、僕はサーシャと──」
「何をしても覆せないことだってあるんだよ!」
クレイシスは激しく手を払って言い放った。
「ラーグ卿がお前を裁判にかけたのは本心だ。二人の気持ちを知ったラーグ卿はその火の粉が降りかかるのを恐れ、お前とは赤の他人であることを裁判で証明してみせたんだ!」
「嘘だ、そんなの! 全部嘘に決まっている!」
道化は喚き、狂ったように手中に短剣を出現させるとクレイシスに襲い掛かった。
――瞬間、
クレイシスの背後から白刃が閃く。
反射的にクレイシスは身を屈めて床に腰を落とした。
そこでようやく道化は気付く。
クレイシスの背後で大鎌をスイングさせるクルドの存在に。
道化は慌てて自身の描いた絵画に入り込もうとするも、
「──!」
逃げられはしなかった。
傍にあった絵画はすでにクレイシスが拳を叩き込んで割れた状態になっていたからだ。
逃げ場を失い、道化はその場に留まるしかなかった。
そんな道化の体を大鎌の刃が貫く。
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