第1章

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大和川中学。 その名の通り大阪の大和川のすぐそばにある中学校である。 かつては日本一汚い河川とテレビでも紹介されていた。 それが工場排水の見直し、川にゴミを捨てるのをやめましょう運動(当然のこと)等のお陰で徐々に水質も改善されてきて、今では時おり魚の跳ねる姿を見かけることもある程に、水質の改善が進んだ。 もう日本一汚い川と言われることもなくなった。 それに対して大和川中学野球部は創部以来、一回戦負けの常連である。 川と同じレベルで語ることではないかもしれないが、その弱さの改善は全くみられない。 選手個々の能力が極めて低いということもない。 それでも毎年見事に一回戦で負け続けている。 ここまで続くとある意味伝統と呼べるのかもしれないが、決して誇れるものではない。 それでも廃部にならず続いている理由は、大和川中学の歴代の校長がすべて野球部の監督を兼ねているということが挙げられるかもしれない。 この学校の校長になるイコール野球部の監督も兼ねるということが決まっているわけでもないらしいが、弱いものを守りたい、弱いものがいとおしいと思うからなのか、結局就任と同時に監督も兼ねる状態が続いている。 校長であるから年齢も50台後半から60代で、決して体力に溢れているというわけでもないため、練習はほぼ生徒のみで、試合等の付き添いくらいしか参加はしない。 。 生徒たちはそのことを残念には思わず、むしろ歓迎していた。 監督がいない方が自分たちの自由にできるからで、そうなれば当然練習もそれほど真剣にするわけもなく、チーム力が向上することもなかった。
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