第1章

3/14
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
そんな大和川中学に現三年生たちが入学した時、もしかしたらこれは一回戦どころか全国も夢ではないのではないかと、引退したOBや大人たちの間で囁かれた。 先ずは投手の淀川サンジ。 小学生の頃からそのピッチングは有名で、よその地区の私立の強豪中学から誘いがあったとか噂が流れる程だった。 本人は否定していたが。 そして何と言っても浪速和博。 打球の飛距離が規格外で、体格もデカく、態度もデカい。 小学校時代は岸和田の方で硬式をしていたようだが、詳しいことを本人が語らなかったので誰も詳しくは知らない。 そんなことよりこのバッティングだけで点数がとれると野球部員たちは狂喜乱舞した。 その他のメンバーも標準以上の実力を備えていたため、大和川中学初の二回戦進出は約束されたも同然だった。 しかし現実は違った。 まずエースと期待された淀川は入学して1か月後交通事故に遭う。 幸い命に別状はなかったものの、利き腕である右手の骨折で3ヶ月の投球禁止を言い渡される。 そして4番候補の浪速は、中学では野球をする気は全くないと入部すらしなかった。 そもそも浪速の体格を見て是非野球部にとなかば無理やり誘って連れてきて、軽くフリーバッティングをさせ、そのあまりの凄さに間違いなく野球部に入るものと周りがおもいこんだだけで、本人は全くその気はなかったと後に話している。 そんなことで結局大和川中学の伝統は今だ健在である。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!