第1章

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彼らが入学して2年が経ち、春の大会も一回戦で敗れ、以前大和川中学の記録は更新中である。 かつて伝統を壊すのはこの代しかないと言われた現三年生に残された大会は夏の大会のみとなってしまった。 「やっぱり負けてもうたなあ~」 そう言ったのは、ショートの山口よしたか。 身長は160センチでやや小柄、足はそこそこ打撃もそこそこだが守備が飛び抜けて上手い。 飛びついたりする派手なプレーが得意である。 1番を打っており、チームのムードメーカー的な存在である。 「このまま俺らも1回も勝たれへんまま引退するんかな~」 「まあそんな気はするわ。守りは固いけど、点とられへんからなあ」 そう言ったのはセカンドの広島たかあき。 山口とは家が隣同士の幼馴染みである。 昔から毎日キャッチボールをしており、二人の呼吸はピッタリで、二遊間の守備は鉄壁である。 山口の派手な守備に対して広島の守備は堅実である。 山口はカープの菊地のファン、広島は引退したが元ヤクルトの宮本のファンである。 共に守備が逆である。 二人は練習や試合後一緒に帰っている。 「1点しか取られてへんのになあ」 「俺ら守備やと全国レベルやと思うけどなあ。キャッチャー以外は」 「確かに」 そう言って二人とも笑った。 「サンジがいつも頑張ってくれてるのに、俺らはほんま不甲斐ないよな。サンジよその中学行ってたらもっと前に全国区やったやろなあ」 「それはどうやろ?サンジは確かに凄いなとは思うけど、最初にケガして以降、何か庇いながら投げてる気がするねんな」 「タカはそう思ってたんか。俺はそんなん考えたことなかったわ」 「よしたかは何も考えてへんもんな」 「俺をアホみたいに言うなって。俺もサンジは実はもっと凄いんちゃうかとは思ってる。ただキャッチャーがあれやしな」 「確かに」 「けど、やっぱり打てるようならな勝つのは無理やで。うちで打てる打者って言うたらケイイチくらいやしなあ」
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