第1章

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翌日、広島は練習前に全員を集め監督の入院の話をした。 全員昨日の山口と琵琶湖とだいたい同じような反応だった。 「練習内容とか時間が変わるってことか?」 この質問をしてきたのは奈良。 小太りキャッチャーである。 エースのサンジとは幼馴染みであり、小学生の頃からバッテリーを組んでいるが、キャッチャーには太っているからと言うことでなかば無理やり決められ今に至る。 頭が良く成績は常に学年トップであり、更に塾にも通っておりそこでもトップである。 奈良が監督代理のことで気になることは練習時間が延びたりすれば勉強に差し支えるということのみである。 「それはどうやろ?監督代理が来るとは聞いたけど、そもそもどんな人かもわからへんしな。とりあえず今週の土曜から来てくれるみたいやから、その時にわかるやろ。けど基本的には今まで通りやとは思うけどな」 「もし時間延びるようやった俺は先に帰るで。俺ら受験生やからな。来年の受験が人生に大きく関わってくるんやしな」 「そんなん高校くらいで人生なんか決まらんて」 そこへ山口が茶化すような感じで言う。 「そんなんよりやっぱり学生言うたら青春やろ!友情と女やで!」 「ほんまお前はアホやな」 奈良は心底呆れたように言った。 「そんなこと言うやつらが結局朝から酒飲んで歯抜けてそこらへんで寝転がっとんねん。俺はそんなんにはなりたないからな。たかがクラブ活動やしな」 「俺は歯抜けてへんぞ!」 「ほんまアホすぎてやってられへんわ。広島、とりあえずはよ練習始めよや」 「ちょい待てや」 琵琶湖が奈良を引き留める。 「こいつがアホなんはみんなわかってる。けど女が大事ってことは正しいし、高校入試で人生決まるとかはショボい考えやわ。ようは奈良はレールに乗っかりたいだけのことやろ。だから女にもてんのや」 「それは関係ないやろ!日本は学歴社会やんけ!だから俺は勉強してるんや!レールに乗んのが何が悪いねん!はみ出すのが格好いいとかの方がダサいわ」 「お前らケンカはやめとけって」 山口が言う。 「お前が言うな!!」 と琵琶湖と奈良。
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