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「サンジ、ちょっと」
練習が始まり、広島はランニングを始めようとしていた淀川を呼び止めた。
そこには他に山口と琵琶湖もいた。
昨日山口が言っていた浪速の件を聞こうというのだろう。
「どうしたん?三人そろって?」
淀川は屈伸運動を始めながら言った。
「昨日山口から聞いたんやけど、浪速を誘うてるらしいな」
琵琶湖が聞く。
「あいつは1年の最初に野球部には入れへんって言ったのに何を今さら、それも4ヶ月後には引退やのに何で誘おてんるんや」
淀川は膝を曲げた状態でう~んと下唇を突き出した。
「何でってことやけど、それは勝ちたいから、全国に行きたいからかな」
淀川はすっと立ち上がりそう言った。
「勝ちたいて、浪速が野球してたのは昔の話やろ。そんな奴誘うて戦力になるわけないやろ」
「みんな知らんもんなあ」
「知らんて、何がやねん」
「和博は野球してへんことはないで」
「和博て、お前えらい仲良えんやなあ」
「まあな。和博はたまに草野球の助っ人とかで試合には出てるんやで」
「草野球と公式の試合とは違うやろ」
「浪速はどうやろなあ」
黙っていた山口が入り込む。
「こないだバイクの後に乗ってたみたいやで。それもえらいヤンチャなバイクや。仮に野球が上手かってもチームに馴染まんのちゃうかあ」
「みんな勘違いしてる。和博はええやつやで」
「サンジのこと俺らは信頼はしてるけど、浪速はなあ~」
広島が言う。
「あのガタイやしヤンキーと絡みあるしなあ~。そんな人間がいきなりチームに入ってうまいこと馴染むか?」
「それは俺が保証する。俺が退院した後、リハビリも兼ねて1人でトレーニングしてたの知ってると思うけど、あの時和博に手伝ってもらってたんや。その時からやから、和博とは1年半くらい一緒にトレーニングしてる。何を今さらって言ってたけど、俺はずっと前から和博を誘ってる。ずっと断られ続けてるだけや」
「それを俺はたまたま見たってことかあ~」
「トレーニングって何してたんや」
「だいたい全部やな。もちろん投球練習もしてるで。和博がキャッチャーでな」
「へえ~。サンジの球取れるんやな」
「それも上から投げてるけどな」
「上からって!怪我してからサンジずっと横やんけ」
「それはコントロールがつかんから。ほんまはもう上から投げれるけど、まだ百パーセントやないから」
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