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15分近く、梨華は、僕がなかなか電話に出なかったことを非難し続けた。
それが終わったかと思えば、今度は、「うさぎなんだよ」ときた。
もう、訳がわからない。
彼女は、一度口を噤むと、
「本当にわからないの?」
と言った。
甘えるような、ともすれば媚びたようにも聞こえる声色。
彼女が、よく使う『技法』。
自分の売り込み方を、魅せ方をよく知っていて、確かに可愛いと思いながらも、一方で今は苛立たしい。
僕が黙りこくると、梨華は大仰にため息を吐いた。
聞こえるように、というよりも聞かせるように、だ。
「寂しいと死んじゃう。私、うさぎだから寂しいと死んじゃうの」
当てつけるような語調で、梨華はそう言い切った。
ーーちょっと待て。
と、出かかった言葉を、なんとか飲み下す。
「……うさぎって。寂しいと死んじゃうって…。梨華?ちょっと待って」
戸惑っている、というよりも話の見えない僕を尻目に、電話の向こうで梨華は鼻を啜った。
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