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ぐっと頭に血が上る。
比較的、気は長いほうだったが、近頃の彼女の態度は目に余った。
「じゃあ言わせてもらうけど」
語調が荒くなる。
しかし、腹が立っているのはお互い様だった。
「こないだ、俺飲み会だからその日の夜は電話できないって言ったよな?そっちこそ、たまにはちゃんと話聞けよ」
思い上がりではなく、なるべく彼女を優先している自信はあった。
それがどうだ。
甘やかしたのが悪いのか、と疑問に思う。
譲歩すればするほど、梨華の態度は悪くなり、度を越して我が儘になった。
「もういい」
拗ねたような大声で、ぶつりと通話を切られる。
きっと、そのとき僕のなかで切れたのは電波だけではなかった。
梨華と僕の間を結ぶ、それは愛かはたまた信頼と呼ぶべきものか定かではないが。
その『何か』が、僕たちの通話と同じように切れたのを感じた。
ハサミで、ちょきんと切断するように。
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