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―――まさか、な。
自分に届いたメールが全国の人たちに同じように届くとして。
普通なら一斉送信なのだから、しいなももうゲームを始めてどうにかなっていなければならない。ワイドショーに上る程の話なら、その被害者たちがゲームをしたのは何日も前の話だろう。
ならば、しいなの手元に送られてきたゲームの広告は全く違うものなのだ。
しいなは軽く溜め息を吐くと、朝食をきれいに食べてから、カバンを持って玄関に向かう。
「あ。しいちゃん?」
春香がリビングから出て来て、玄関のしいなに声を掛ける。しいなが振り向くと、春香はにっこりと笑って、言った。
「いってらっしゃい。」
「…いってきます。」
毎朝の恒例行事。
両親が死んでから、二人だけで暮らす様になってから。
姉の春香は、この挨拶を欠かしたことが無い。
いつも笑顔でしいなを送り出す。
しいなはそれを、少しだけうっとおしいと思いながらも、振り返って姉の顔を見て、返事をする。
それで春香が安心するような気がしているからだ。
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