1.

5/7
前へ
/12ページ
次へ
         ―――まさか、な。  自分に届いたメールが全国の人たちに同じように届くとして。  普通なら一斉送信なのだから、しいなももうゲームを始めてどうにかなっていなければならない。ワイドショーに上る程の話なら、その被害者たちがゲームをしたのは何日も前の話だろう。  ならば、しいなの手元に送られてきたゲームの広告は全く違うものなのだ。  しいなは軽く溜め息を吐くと、朝食をきれいに食べてから、カバンを持って玄関に向かう。 「あ。しいちゃん?」  春香がリビングから出て来て、玄関のしいなに声を掛ける。しいなが振り向くと、春香はにっこりと笑って、言った。 「いってらっしゃい。」 「…いってきます。」  毎朝の恒例行事。  両親が死んでから、二人だけで暮らす様になってから。  姉の春香は、この挨拶を欠かしたことが無い。  いつも笑顔でしいなを送り出す。  しいなはそれを、少しだけうっとおしいと思いながらも、振り返って姉の顔を見て、返事をする。  それで春香が安心するような気がしているからだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加