第1章

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地下に階段を見つけた。高みへと昇るためにそれはあった。真に人間的であろうとする者は緩慢に進む。自らが降りてきた悲劇を踏みしめるために。 ただ人間であろうとする者は勇ましく駆け上がった。その種でしかないからだった。 先行く愚者にそして男は侮蔑も嘲罵も叱責も与えず、しかし躱しても行かず、立ち止まってなお振り向かず、越えるように促すばかり。 難なく越えて、息を荒らげ、愚者は地上にて光を望み、野に解き放たれる。 緩慢な歩みはそして緑野の一段下に留まり、境界を見極め地底を振り向き、遙かなる跳躍を果たす。
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