夢の中の話でも

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ルームメイトとは言え、紀香とは必要最低限の会話以外ほとんどしたことがなかった。べつに仲が悪いとか苦手意識があったとかではなく(紀香はどう思っていたのかは知らないが)、私たちにとってはそれが普通だったのかもしれない。 イヤフォンでラジオやMDを聞いている私の後ろで紀香は本を読んだりパソコンでインターネットを見ていたりしていた。お互い観賞することも、されることも無く…。 ところがその後私は1年足らずで寮を辞めてしまった。皆と同じ時間に同じことをする、生活パターンがきっちり整えられた世界に馴染めなかったのだ。 だからと言って実家から通うのも嫌だったので、親からのほんの少しの仕送りと、月火水と土日の夜に焼き肉屋でバイトをしてやりくりしながら安いアパートを借りた。
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