第1章

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一体どうなっているんだ?   私は頭を抱えた。  何で、何で私は熊なんかになってしまったのだろう。  必死に記憶の糸を辿っていく。  するとぼんやりとではあるが、思い出すことが出来た。  そうだ。私は死んだんだ。森でキノコを採っていた時にツキノワグマに襲われて。  そして私は死ぬ直前に思ったんだ。次に生まれ変わる時にはツキノワグマになりたいって。  弱っちい体の人間じゃなく、強い肉体を持ったツキノワグマになりたいって。  どうやら私の願いは叶ったようだ。  だけど、まさか動物園のツキノワグマに生まれ変わるとは想定外だったよ。  強い体になって自由気ままに、生きて行きたかったのにこれじゃあまるで、駕籠の中の鳥だよ。いやまったく同じ状況か。  私は苦笑した。  この熊を飼っている場所には私を含めて少なくとも数十匹の熊がいた。  これからここの皆と暮らしていかなくてはならないのか。  そんなことを考えていた時、すぐ近くにいた熊がまるで威嚇をするようにすくと立ち上がった。  何だ? 何をするんだ?  私がそう思っていると、その熊は人間がお願いをするようなポーズを数回した。  直後、壁の上から何かがその熊めがけて降って来た。  それはリンゴだった。  熊はそのリンゴを掴むとそれを食べ始めた。  そうかあの行為は餌を頂戴の行為だったのか。  他の熊達も眺めていると、他の熊達も先ほどの熊と同じか、似たような行為を行っていた。  私には一向に餌は投げられなかった。  
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