200人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
その日は朝から雨が降っていた。
お互いに違う本を読みながら時間を過ごしていたが、実は幸が昨夜からそわそわしている。
なにか言いたそうにするんだけど、おれと目線があうとぱっとはずす。
おれから聞こうとするとはぐらかす。
なんだろうとおもっていたがとうとう、
「…お願いがあるんだけど、」
そう言う幸のほうを見ると、すねた子どものような顔をしていた。
これは…恥かしがっている!!
「なに?」
な、なんだろう!
おれは心の中で「落ち着けおれ!」と自分をなだめた。
「来週の土日、一緒に実家に来てくれないかな」
実家…
「…両親へのご挨拶?」
「ちがいます」
幸の否定は早かった。
手帳を確認してから、
「予定もないし、いいよ」
とこたえる。
「ありがとう」
なんだろう…
「幸の実家ってなにかあるの?」
「うち、1400年くらい続く神社で、毎年夏至にはお祭りがあるんです」
「へええ!!!すごいな!」
そうか、幸のなんとも言えない気品は、神社の血筋(?)だからなんだな、とか妙に納得してしまう。
「雅さんは、神社の歴史に興味があってきたって、ことにさせてください」
「…うん」
最初のコメントを投稿しよう!