蛍と蛙と夏至の夜

2/6
200人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
その日は朝から雨が降っていた。 お互いに違う本を読みながら時間を過ごしていたが、実は幸が昨夜からそわそわしている。 なにか言いたそうにするんだけど、おれと目線があうとぱっとはずす。 おれから聞こうとするとはぐらかす。 なんだろうとおもっていたがとうとう、 「…お願いがあるんだけど、」 そう言う幸のほうを見ると、すねた子どものような顔をしていた。 これは…恥かしがっている!! 「なに?」 な、なんだろう! おれは心の中で「落ち着けおれ!」と自分をなだめた。 「来週の土日、一緒に実家に来てくれないかな」 実家… 「…両親へのご挨拶?」 「ちがいます」 幸の否定は早かった。 手帳を確認してから、 「予定もないし、いいよ」 とこたえる。 「ありがとう」 なんだろう… 「幸の実家ってなにかあるの?」 「うち、1400年くらい続く神社で、毎年夏至にはお祭りがあるんです」 「へええ!!!すごいな!」 そうか、幸のなんとも言えない気品は、神社の血筋(?)だからなんだな、とか妙に納得してしまう。 「雅さんは、神社の歴史に興味があってきたって、ことにさせてください」 「…うん」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!