嵯峨野さやさや

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四番です。 ♪京都 嵯峨野に♪吹く風は♪ ♪愛の言葉を♪笹舟に♪ ♪のせて心に♪しみとおる♪ 嵯峨野はよく風の通るところです。 嵐山 藪の茂りや 風の筋        「嵯峨日記 -松尾芭蕉」 落柿舎に滞在していた芭蕉は、嵯峨野の小督塚(おごうづか)を訪ねて、このように詠みました。 小督(おごう)とは、高倉天皇の寵愛を受けていた女房(侍女)の名前です。 平清盛は娘の中宮徳子を高倉天皇の妃とすべく図った。政略結婚を企てたのです。 これを察した小督は自ら身を引き、嵯峨野に隠れ住みます。 高倉天皇は、これを悲しみ、小督を探し出して連れ戻しますが、また清盛らによって引き裂かれます。 そんな悲恋物語もある嵯峨野の小督塚です。 嵯峨野は竹薮の多いところで、生い茂る笹の葉を震わせて風が抜けて行きます。 笹の葉のように、幾重にも織り込まれた人間模様。 嵯峨野に吹く風は幾多の愛の物語を笹舟に乗せて吹き流します。 ♪愛の言葉を♪笹舟に♪ 笹舟ですから桂川に浮かべて流したと考えるのが自然でしょう。 ♪のせて心に♪しみとおる♪ 嵯峨野の風が心の中まで沁み通るようだ。 笹舟を浮かべ、それを見送る一人旅の女性の姿が浮かびます。 嵯峨野は源氏物語の舞台ともなりました。 笹舟は、嵯峨野で繰り広げられた悲恋の歴史を静かに揺らめかせながら、今日も流れを下って行くのです。 たんぽぽ姉妹の透き通った歌声は、あたかも嵯峨野の風のようです。 『嵯峨野さやさや』は、詩と曲調と美声とが見事にマッチして不朽の名曲となりました。 ♪嵯峨野 笹の葉♪さやさやと♪ ♪嵯峨野 笹の葉♪さやさやと♪ ♪さやさやと♪   平成26年10月6日
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