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何にも楽しない。
周りがばか騒ぎする中、自分だけが浮いてる。
こんな曲、知らんもん。
「どうしたん?」
不意にソファが沈んだ。
「誰やっけ?」
「ひっどー。さっき自己紹介したやんか?」
「あ……悪い。俺、人の名前覚えんの苦手やから」
「私は覚えてるで。トーリくんやんな?」
そんな体寄せてくんな。
何も嬉しないねん。
その茶色い毛も、おっきいピアスも、鋭く尖った爪も、何も魅力を感じひん。
「トーリくん、モテるやろ?」
「そんなことない」
「またまたぁ。勝谷くんが言うてたもん。
今日は男前連れてくるって」
「それ、俺のことちゃうから」
それは聖護のことやろ。
他のツレも結構モテるヤツばっかやし。
「トーリくん、肌きれいやな。
羨ましいわ」
頬っぺたに触れようとする指先。
何か……嫌や。
「触んなっ」
振り払った細い腕。
俺の最悪な声は大音量の音楽の中でも確実に響いた。
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