キミを好きになった日

11/15
前へ
/17ページ
次へ
何にも楽しない。 周りがばか騒ぎする中、自分だけが浮いてる。 こんな曲、知らんもん。 「どうしたん?」 不意にソファが沈んだ。 「誰やっけ?」 「ひっどー。さっき自己紹介したやんか?」 「あ……悪い。俺、人の名前覚えんの苦手やから」 「私は覚えてるで。トーリくんやんな?」 そんな体寄せてくんな。 何も嬉しないねん。 その茶色い毛も、おっきいピアスも、鋭く尖った爪も、何も魅力を感じひん。 「トーリくん、モテるやろ?」 「そんなことない」 「またまたぁ。勝谷くんが言うてたもん。 今日は男前連れてくるって」 「それ、俺のことちゃうから」 それは聖護のことやろ。 他のツレも結構モテるヤツばっかやし。 「トーリくん、肌きれいやな。 羨ましいわ」 頬っぺたに触れようとする指先。 何か……嫌や。 「触んなっ」 振り払った細い腕。 俺の最悪な声は大音量の音楽の中でも確実に響いた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加