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ホームに降りたら、いつものようにタヌキがいた。
信楽って言うたら、これしかない。
大きいのから小さいの。
いっぱい、おるな……
何やねん、そんな哀れむような目で見んなや。
分かってるわ、アホなんは俺やって。
「で、何や。そんなとこで小さなって」
すぐに分かった。
そこにいたんが聖護やって。
タヌキの置きもんに紛れながら膝抱えて、大きい体、必死にちっさぁして。
「菫梨くん……」
「お前、今日だけで何回俺の名前呼ぶねん」
「だって……」
「いつから、そこにおんねん」
「ずっと……」
「真っ直ぐ帰ってきてか?」
頷く聖護を見たら、天を仰ぎたくなる。
「何で?」
「菫梨くんが……いーひんなると思ったから」
「だから、あれはもしもの話やって言うたやんか」
「そやけどっ……」
「先にいーひんなったんは、お前の方やろっ」
もう我慢ならんかった。
全部、「菫梨くんが」って言う聖護に。
「俺はお前と別れるとか、付き合うの嫌やとか1回も言うてへんのに……
そやのに勝手にいーひんなって……
俺がどんなに怖かったかなんて知らんやろっ」
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