キミを好きになった日

14/15
前へ
/17ページ
次へ
ホームに降りたら、いつものようにタヌキがいた。 信楽って言うたら、これしかない。 大きいのから小さいの。 いっぱい、おるな…… 何やねん、そんな哀れむような目で見んなや。 分かってるわ、アホなんは俺やって。 「で、何や。そんなとこで小さなって」 すぐに分かった。 そこにいたんが聖護やって。 タヌキの置きもんに紛れながら膝抱えて、大きい体、必死にちっさぁして。 「菫梨くん……」 「お前、今日だけで何回俺の名前呼ぶねん」 「だって……」 「いつから、そこにおんねん」 「ずっと……」 「真っ直ぐ帰ってきてか?」 頷く聖護を見たら、天を仰ぎたくなる。 「何で?」 「菫梨くんが……いーひんなると思ったから」 「だから、あれはもしもの話やって言うたやんか」 「そやけどっ……」 「先にいーひんなったんは、お前の方やろっ」 もう我慢ならんかった。 全部、「菫梨くんが」って言う聖護に。 「俺はお前と別れるとか、付き合うの嫌やとか1回も言うてへんのに…… そやのに勝手にいーひんなって…… 俺がどんなに怖かったかなんて知らんやろっ」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加