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「と……」
「ええから立てやっ」
俺は聖護の胸ぐらを掴んで無理やり立たせた。
「菫……梨くん?」
「俺がな、どんな思いで帰ってきたか知らんやろ。
うるさいのが隣におらんし、すぐにくっついてくる暑苦しいのもおらんし……
1人で清々したわ」
俺、やっぱアホやん。
だって、めっちゃ泣きそうやもん。
どうしてくれんねん……止まらんやんけ。
「けどな、うるさくて暑苦しいのがいーひんたら寂しいやんけっ。
何で俺にそんな思いさせんねんっ、聖護のくせにっ」
「とうっ……」
「しゃがめやっ」
「えっ……と……」
「しゃがめ言うてんねんっ」
「何……で?」
「言わな分からんのかっ」
「分からへんよ」
コイツ……ほんまに分かってへんのか?
分からんふりして俺を試してるんちゃうんか?
そやけど……それでもええわ。
俺は掴んだままの胸ぐらを引っ張り下ろした。
「キスさせろや」
唇が触れる寸前。
聖護の目が優しなった。
「……ええよ。あの人おらんなったら……」
聖護の目にはホームに残る人影が見えたらしいけど……
そんなんどうでもええわ。
俺は今すぐ欲しいねん。
お前が……
-fin-
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