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「誰かに見られたらどうすんねんっ」
息が上がるのは口を塞がれていたからだけやない。
こんな……男同士で……誰かに……
「お前、朝からおかしいんちゃうんか?
言いたいことあるんやったら言えやっ」
弾みで唇に残る残像を拭った。
その瞬間、口角を上げた聖護。
けど、目だけは寂しげなままや……
「菫梨くん……」
いつも俺の後をついて回る人懐っこさが見えないことに焦って心臓が鼓動を強めた。
「何や……ねん」
目の前にあった聖護の顔がスッと離れた。
「はよ言うてくれたらええのに……」
「何を……や?」
その答えを聞き返しておきながら俺の心臓、めっちゃ痛い。
「やっぱ男となんて無理やって」
「ちょお待てやっ、俺そんなこと……」
「気色悪かったんやろ、キスすんの」
その一言にハッとして唇を腕で覆った。
「べつに菫梨くんが悪いわけちゃうよ。
それが普通やから。
そやから……」
「これはちゃうって……」
何でか、それ以上の言葉を聞きたくなくて必死に遮ろうとした。
そやのに……
「友達に戻ろか……」
何で泣きそうやねん……俺。
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