第1章

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 何かがいる気配を感じて目が覚めた。  カチャカチャという音がする。  時より、立ち止まり、時より軽快にそれが鳴る。  最初は息が止まり、そして固まったがそうもしてられない。  自己鍛錬用にと昔買い、すぐに飽きてしまった木刀の埃をはらいながら握りしめる。 「……」  足音を立てずにドアに近づき、その奥の様子をうかがった。  まだ音は鳴っている。  確かに何かがいるのだ。  息を静かに呑み……そして 「そこにいるのは誰だ!」  木刀を振り上げるようにしてドアを開け放った。  しかし、目にした光景を前に俺は全ての行動を止めた。 「え……あっ……?」  言葉が出ない。  勢いでずり落ちかけたメガネを押し上げ、木刀を下ろす。  確かに侵入者はいる……しかし…… 「な、なんだ?」  目の前にいるもの……  柴犬だった。  それがちょこんと座っている。  大きさからすれば、十分成犬だろう。  玄関が開いてるのだろうか。  思わず確認しに行くが、鍵はしっかりと閉まっている。  夢?  そうも思いもう一度もどるが、やはり犬はいた。
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