第二章 火前坊

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「本当に話が早いな」 「わざわざ探偵さんが聞きに来るような事だからね、少し前までは警察の人も何度か来ていたよ」 「その日谷さんについて、事件直前の様子とかどんな小さい事でもいいんだ。何か気になった事があったら教えてくれないか?」 刈谷教員は物悲しげな視線を花瓶が置かれた机に向ける。 そこが亡くなった少女の席なのだろう。 「日谷さんは……とても自殺、まして家族まで巻き込んで心中を図ろうとするような子じゃなかったよ。どこか思い詰めた様子も全く……いや、もしかしたら所々で助けを求めるサインを出していたのかもしれないね。僕達教師がいち早く気づいてあげるべきなのに、副担任という立場でありながら彼女の気持ちに気づいてあげられなかった自分を情けなく思うよ」 刈谷教員の言葉は次第に嗚咽へと変わっていた。 「仕方ないんじゃないか。親しい友人にもそんな気配を感じさせなかったらしいし、あんまり考え過ぎて今度はアンタが思い詰めちまっても良くないだろ」 「はは、見苦しい所を見せてしまったね。こんな姿生徒達には見せられないな」 「溜め込みすぎるよりはいいんじゃないか」
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