第二章 火前坊

13/15
前へ
/77ページ
次へ
そしてしばらく探索を続けたがこの家のどこを探しても人の死体、もしくはその一部を見つけることは出来なかった。 ということは、やっぱり今回の件と日谷みのりの件この二つは同じ物だ。 ……同じ妖怪による物だ。 俺の知る限りこんな現象を引き起こす妖怪は唯ひとつ。 「…………火前坊」 平安時代に葬送地として知られた京都に現れるという妖怪で、炎と煙に包まれた乞食坊主のような姿をしているという。 十世紀末頃には高僧たちが自らの体に火を放ち命を絶つ焚死往生を願う信仰儀式が多くあったが、中には現世に未練があったなど極楽往生できなかった者もいる。その場合そうした僧の怨念だけが残る、そしてそれが人間にとり憑くことで火前坊という妖怪が生まれる。 「で、周囲の人間に自分と同じ最後を味あわせようとする、何ともはた迷惑な妖怪だ」 つまり、被害者たち二人に共通して接点のある人物が火前坊に取り憑かれている可能性が高いということだ。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

647人が本棚に入れています
本棚に追加