第二章 火前坊

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いるな、一人。 俺が今日出会った人物の中でこの条件に合致する人物が。 ……刈谷雅紀。 二人が通う高校の教師であれば、いくらでも火前坊の呪いを広めることができただろう。 火事場から出ると俺とは入れ違いになる形で鑑識の人達が焼け落ちた家の中へと入っていく。 野次馬は既にいなくなっておりその場に残されたのは、生気を失った顔の家族だけであった。 俺が彼らにかけられる言葉は何も無い。 日谷みのりの時もこうだったのだろう。 これほど壮絶な事件が二度も。 俺が彼らにかけられる言葉は何も無い、俺にできるのはこの悲劇を引き起こした元凶を叩き潰す事だけだ。 ふつふつと湧き上がる感情を抑え、元来た道を駆け戻る。 激しい動きのせいで買い物袋の中身が暴れているの気にしているとポケットからスマホの着信音が。 着信相手を確認すると慣れた手つきで通話画面を呼び出す、そして開口一番こう告げた。
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