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鬼がゆっくりと立ち上がる。その顔は屈辱から来る凄まじい怒りで醜く歪んでいた。
「殺す殺す殺す! たかが人間が俺をコケにしやがって!!」
「俺の結界に勝手に躓いてコケただけだろ? 逆恨みはやめて欲しいな。それに……」
躓いただけ、と言ってもあの勢いで迫る鬼を引っ掛けたのだ、その負荷は確実に俺の身体を蝕んでいる。正直立っているだけで精一杯だ。
それでも。
「お前に俺は殺せない。さっきのがお前にとって最後のチャンスだったんだ」
虚勢でもハッタリでもない、ただ決定した事実として述べる。
「そう何度もラッキーが続くと思うな! 今度こそ、この手で君を八つに引き裂いてやる!!」
ダンッ! と鬼が凄まじい脚力でもって床を蹴り俺目掛けて飛びかかる。もうそれを避けるどころか、指一本動かす力も残ってねぇ。
「だからさ……、後は任せた。――――璃亜」
「かしこまりました、所長」
ゴバッ!! と、窓側の壁を文字通り突き破り俺と巨大な鬼の間に飛び込んできた人影があった。
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