第1章

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宋一は晴れやかな顔になり、竹夫の隣に座った。 「おばあちゃん、天気もエエし、散歩行く?」 姫子が時子の耳に顔を寄せ、囁くと、時子は穏やかに微笑みながら、姫子をジーっと見つめ、ゆっくりと頷いた。 「おじいちゃん、おばあちゃんを車椅子に乗っけるの手伝って。 あ、宋一おじさんも」 姫子は中学生らしい、ういういしい笑顔を見せた。 その孫を時子は、相変わらず微笑みながら目で追っていた。 「おう、判った」 オッサン二人は「よっこらしょ」と立ち上がった。 宋一は時子を抱えながら (そっか、多分、おばさんが、こうなってもうて、当時の意識が全く無くなったいま、姫子の中の血の時子オバサンに対する復讐感情や敵対心も消え、感傷も自然と癒えたっちゅう訳やな。 ま、正真正銘、姫子はオバサンの孫なんやし。 ただ、卓也のほうは、過去の復讐を為し遂げたってことになるんやろなぁ。 ん、そや、絶対、俺の思った通りや。 もうこれで過去のことは無くなったんや。 だーれも真相を知る者は居らへんねん。 俺さえ黙っとったら) 等と、己の勝手な解釈に酔っていた。 外に出ると時子は、おてんとさんを仰ぎ、心地良さそうに目を細めた。 「そこの公園行ってくるわ。 ほな、おばあちゃん、車椅子、動かすでー。 大丈夫やな」 姫子はゆっくりと車椅子を押して行った。 それを、酒に酔って真っ赤な顔の竹夫と、持論に酔い、みょうに納得している宋一は見送っていた。 血の根 完
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