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宋一はあることを思いだした。
(さっきおばさんは)
時子は宋一に
「サカキ・・・あのサカキが・・・」
と言った。
あのサカキと言うからには、知り合いか面識のある相手と言うことになる。
普通なら
「サカキと言う人(男)。
または、咲代はサカキと呼んでいた」
等と言う
表現を使うのではないか。
また、サカキと、うなされていたことも、
まさか娘の浮気の相手のこととも思えない。
時子は
娘の浮気を知ったとしても、案外
「ばれんようにやりや」
などとアドバイスしそうな楽天的な性格である。
そのおばさんが、娘の相手の名を上げて、うなされるとは、到底思えないのである。
「やはり俺が推測したとおりなんか」
(そうだとしたら、おばさんが人殺しだと判ってまうやんけ)
宋一の気持ちは揺れ動き、ブレーキに軽く足を乗せた。
(どないしたらエエねん・・・・
いや、もう、後戻りはでけへん)
宋一は再度、アクセルを開いた。
なわて光署に入ると、駐車場の白線をまたぐようにして、荒々しく車を停めた。
宋一は急いで車から降り、署内に入って行った。
事務処理をしていた数人の警察官が、こいつなんやねん、というような目を向けたが、そんなことを気にかける暇もなく、近くにいた職員に広野刑事を呼んで貰った。
少し待っていると広野が目の前の階段を降りてきた。
「おお、宋一っちゃん、毎度」
広野は高い位置で手を振り、ちょっとピッチをあげ近付いて来た。
1度しか会ってないのに「ちゃん」付けで呼ばれてしまい、ちょっと照れた。
(どんだけフレンドリーデカやねん)
と思いながらも
「どーも、あのせつはありがとーございました」
と頭を下げた。
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