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「うんうん、せやけど今日はまたどないしたん?」
「実は、今回の事件で殺害された岩井咲代は、僕のイトコなんですよ」
「えー、ほんまかいな。なんとまあ・・・・それはまた、お気の毒やな・・・」
急に彼の顔から笑いが消え、逆に
驚きと不安な表情になって行った。
「それで・・・事件当日、咲代ちゃんが会っていたと思われる相手の情報を持って来たんですけど」
宋一は、まだ肩で息をしながらも、今さっき時子から聞いた内容を伝えた。
それを聞いていた広野は顔色が変わっていき、ゴクンと、ツバを飲み込む音が鮮明に聞こえた。
「そ、それはホンマやな!
サカキ、サカキなんやな!」
声が荒くなっていた。
「ハイ」
宋一は頷いた。
「あ、そういや、あんた、この間、榊事件のこと聞きにきよったけど、今回の件と何や、繋がりがあったんやな」
「い、いや、この前伺ったのは、あくまでも個人的な用で、まさかこうなるとは思っていなかったです。
せやから、単なる同姓かも知れません」
宋一は戸惑いながらそう言った。
「そやな」
広野に疑った様子はなかった。
「せやけど、この情報はデカイでー。
榊なんて名は少ないやろうしな。
いや、宋ちゃん、おおきにな。
またなんかあったら連絡してや」
広野は興奮状態で階段を上がって行った。
姿が見えなくなってから、途中、足を踏み外したようで、ドタッと大きな音が聞こえて来た。
(大丈夫か、オッサン)
宋一はあきれ顔で呟いた。
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