第1章

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9 日曜日の午前中。 家でノンビリしていた宋一の携帯電話がなった。 電話を耳に当てると、つんさくような広野の声が聞こえて来た。 「今日、宋ちゃん休みやろ? 今からメシ食いに行かへんか? 外環沿いに上手いトンカツ屋あんねん」 その割れそうな弾んだ声に、宋一は少し、携帯電話を耳から遠ざけ (事件の話しやな) と感じ 「大丈夫ですよ。なわて光署に行けばいいですか?」 安っぽい腕時計に目を向けた。 「エエよ。ほな待ってるからな」 宋一は携帯電話をポケットにしまい、身支度を始めた。 一時間後、警察署に着いた宋一は、車を駐車場の白線に沿って、キレイに停めた。 その時、待ってましたとばかりのタイミングで広野刑事が現れた。 「急に呼び出してすまんな」 「いえいえ。乗って行きます?」 宋一は助手席のドアを開けようとした。 「いや、歩いてでえんちゃう? すぐ、そこやねん」 「判りました」 宋一は車から降りた。 二人は、良い感じで車が流れている外環(国道170号線)を30分ほど歩いた。 (すぐそこちゃうやんけー) ちょっと、へたってきた宋一がモゴモゴぼやいていると 「ほら、ここや。『トントンカツカツ』」 広野が指差した目の前の店には、大きな黄色の看板に「トントンカツカツ」と、下手な丸文字で書かれていた。 (トントンカツカツて、安易な店名の上に、むっちゃ、字ー下手やん) ふざけとるなと宋一は思ったが、さっさと店内に入った広野の後について、入って行った。 昼前なので、まだ席は8割ほど開いていた。 国道の見える窓側に座り、トンカツ定食を注文した。
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