第1章

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「あー、宋ちゃん、箸、止まっとるで。 はよ、食わな、冷えてまうやろー」 広野の言葉にハッと我に帰った。 「そ、そうですね」 彼のお皿はトンカツの下の、刻んだきゃべつまで綺麗に消化していた。 「あ、おねえちゃん、これ、さげてー。 そんでな・・・レイコー(アイスコーヒー)・・・・」 広野はウエイトレスに声をかけたあと 宋一に 「宋ちゃん、コーヒーは冷たいの、あったかいの、どっちや」 と問いかけた。 宋一が 「あ、僕もアイスで」 と言うと 「ねえちゃん、れいこー2つね」 と注文した。 そして広野は外の国道を眺めながら 「所でなぁ、俺、あれからずっと気になってたことあってん」 「ハイ?」 宋一は残りのトンカツを口に放り込み、三口噛んだ所で動きが止まった。 「宋ちゃん、1ヶ月ちょっと前、うちに訪ねて来たやんかー。 30年前の事件のことで。 で、今回の犯人が、あの時の子供で、しかも殺害されたのが宋ちゃんのイトコやった。 こういうパターンて、ひじょーに刑事心をくすぐんねんな。 ほんまは・・・これ、偶然やないやろ」 広野は、トンカツで頬を膨らませている宋一をジーっと見つめた。 (と、とうとう来たか) 宋一は口の中のカツをゴクンと飲みこみ、体が熱くなってきた。
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