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「あー、宋ちゃん、箸、止まっとるで。
はよ、食わな、冷えてまうやろー」
広野の言葉にハッと我に帰った。
「そ、そうですね」
彼のお皿はトンカツの下の、刻んだきゃべつまで綺麗に消化していた。
「あ、おねえちゃん、これ、さげてー。
そんでな・・・レイコー(アイスコーヒー)・・・・」
広野はウエイトレスに声をかけたあと
宋一に
「宋ちゃん、コーヒーは冷たいの、あったかいの、どっちや」
と問いかけた。
宋一が
「あ、僕もアイスで」
と言うと
「ねえちゃん、れいこー2つね」
と注文した。
そして広野は外の国道を眺めながら
「所でなぁ、俺、あれからずっと気になってたことあってん」
「ハイ?」
宋一は残りのトンカツを口に放り込み、三口噛んだ所で動きが止まった。
「宋ちゃん、1ヶ月ちょっと前、うちに訪ねて来たやんかー。
30年前の事件のことで。
で、今回の犯人が、あの時の子供で、しかも殺害されたのが宋ちゃんのイトコやった。
こういうパターンて、ひじょーに刑事心をくすぐんねんな。
ほんまは・・・これ、偶然やないやろ」
広野は、トンカツで頬を膨らませている宋一をジーっと見つめた。
(と、とうとう来たか)
宋一は口の中のカツをゴクンと飲みこみ、体が熱くなってきた。
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