人食いの村巷

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街からでて、まずは東に歩いていくことにした。日の出づる国、日本出身である私としては、やはり東に向かうのが正解だろうと思ったが故だ。 昨日、宿に泊まってから、シャワーを浴びたり荷物を整理したり色々したのち、眠ろうとして結局眠れないことを再確認して―――、私は出発した。 世界樹を見つける旅に、いよいよ出かけることにしたのだ。 ありとあらゆる世界を旅して、いろんな街で情報収集を行い、世界樹を見つけ―――、そして、首を吊る。 自殺する。 それが私の現在の生きる目的であり、死ぬためのガイドラインだった。 ゼロからの出発。 所謂乗り物と言う奴には生憎縁がないので、徒歩での出発ではあるけれど、私は疲労と無縁なので全く問題がない。 そしてなにより、また最近気が付いたことなのだが、どうやら私はいくら運動しても汗をかかないようだ。 と、言うか―――、ありていに言って、代謝が行われない。 人間には代謝機能と言うものがあって、爪が伸びたり髪が伸びたりするのも新陳代謝によりものらしい。詳しくは知らないけれど。 しかし、どうやら私にはそれがないようなのである。 昨日、ふと、「髪を切ったらどうなるんだろう」と思った。私の身体はいくら切り離されてもすぐに戻ってしまうけれど、それなら髪は? 爪は? といった具合に疑問に思った。 そして独絶丸を利用して、髪を切ってみたのだが―――、予想通りと言うべきか、すぐに引っ付いてしまった。 引っ付かなきように押さえつけておくと、これまたやはり『灰化』が起こり、結局元通り。爪も同じである。 考えてみれば、私は汗もかかなかった気がする―――、つまり、代謝機能が使われていない。 そこから推測するに、私の不死と言うのは『固定』であるのかもしれない。私と言う物質が壊れたら、この世界に送られたときの状態に戻される。 まるで私と言う存在が、真に孤立してしまったような感じである。いくら動いても、何をしても元通り。文字通り、固定されている―――、なんて、 「・・・・・・、まあ、全部憶測だけれど・・・・・・」
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