堕落を求めて三千里

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「・・・・・・、えっと、どう言う、こと、です?」 本来なら、『敵』と対話している場合じゃないことは、重々承知の上だけれど、しかしながら、ことは私の不死性に関することだ。 そして、さっきのやり取りだけで、アンドートの思考力が比較的高いことは解っている。 だから、彼が何をしたのかを知りたかった。 素直に教えてくれるとも思えなかったけれど、しかしながらアンドートは「ああ?」と不機嫌そうに口を開く。 「超速再生の不死ってのは結構いるんだよ。殺そうとしても、殺すだけの傷を負わせる前に、あるいは負わせたとしても、どっちみち再生しちまって殺せない、って奴。てめぇも不死なら解るだろ? で、そう言うのを殺すための定石手段が、今やったことだ」 「・・・・・・?」 「つまり、『超再生薬』の投与による、〝過剰再生〟・・・・・・、再生薬によって、傷が治っているにも関わらず、身体は傷を治そうとする。結果的に、傷の部分の肉が生成されすぎて、皮膚の内側に収まらず、次から次へと弾ける。おもしれぇんだぜ? 肌の下に肉の蛇でも、のたうち回っているみてぇになるんだ。で、弾けた傷も治そうとして、また弾ける。その無限ループによって傷はどんどん拡大し、再生力が枯渇すれば無事死亡、ってわけだ」 「・・・・・・、・・・・・・」 想像する。 抉られた傷が、過剰に再生して、モコモコと肉が盛り上がりながら、皮膚を突き破って、肉片と血しぶきが弾ける。それが延々と続いて、どんどん拡大していく。 うわぁ。 嫌過ぎる。 さすがの私でも、その死に方はちょっと遠慮したかった。 「が、てめぇには何の効果もなかった。つまり、お前の傷は『再生』しているわけじゃねぇ、ってことだ」 「・・・・・・、再生、じゃ、ない」 そう、言われれば、そうかもしれない。 私の身体から切り離された、例えば腕や足なんかは、身体に戻ってきて、治る。 新しいものが作られるわけじゃない。身体に戻れない場合は、灰化してから治る。 なんにせよ、多分、質量は保存されているのだ。 つまり、再生じゃなくて・・・・・・、なんと言えば良いのだろうか。修繕? 修復? なんと呼べば良いのかは解らないけれど、とにかく、『新しく作られて』治っているわけではなく、『元の部分を使って』治っているに過ぎないという事だ。
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