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ようやく街についた。ここまでの道のり、ただひたすら苦難の道であったことをここに記しておきたい。
小説に換算するならば、おおよそ四百八十七ページを超えるであろう大冒険だった。一体幾度死んだことか解らない。
やれ石に躓いて謎の獣の尾を踏んでしまい、追いかけられて食われたり。
やれ何もないところで躓いて、その先に待ち構えていた崖から転落死したり。
やれ手の届くところにあった木の実を、興味本位で齧ってみたらスプーンで眼球を抉られるような頭痛がして死に至ったり。
・・・・・・、可笑しい。ぜんぶ私の自業自得な気がする。
底なし沼に嵌った時は死を覚悟したものだが、苦しいだけで死ねなかったので必死になって這い上がってきた。あれが火事場の馬鹿力と言う奴なのだろうか。
しかし、ここまでの道のりでわかったことがいくつもある。
―――、まず、私の身体だが、疲れない。
あの森から街まで、ノンストップで歩き続けてきたのだが、一向に疲労が蓄積されない。足を止めることなく延々と歩き続けることが可能だった。
そしてお腹が空かない。果実を食べたのは、そのあまりにも毒々しい色合いに目を惹かれ、これはきっと毒物に違いないと、自殺を試して見たからなので、空腹とは無関係である。
続いて、眠らない。
疲労が蓄積されないのだから当たり前なのかもしれないけれど、一向に眠くならない。私の脚力は運動不足な日本人のそれでしかないので、街につくまで二日ほど掛ったのだが、それまでにまったく眠くならなかった。
より正確に言えば。
眠れない。
一切眠れないのだ。
夜の森を歩くことは危険だろうと思い、夜を明かそうと睡眠を試みたのだが、眠ると言う挑戦は敗北に終わり、結局夜通し歩き続けることになった。ストップに失敗したのだから、結果としてノンストップである。
故に、どうやら私は眠らず、何も食べず、永遠に動き続けることが出来る超人的存在になっているようなのだ。
・・・・・・、奴隷としてピッタリな体質である。
・・・・・・、なんか嫌なことを思ってしまった。
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