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「・・・・・・、ちなみに、もしかして、人生万事最期は馬、と言うのも間違っていたりしますか?」
「・・・・・・、それはボケで言っているのかね? それとも天然ボケで言っているのかね? 最期は馬、ってどう言う状況なんだ」
「ほら、よく『馬に蹴られて死んじまえ!!』って言うじゃないですか」
「それとこれとは関係ない・・・・・・、いや、そもそもなぜ〝黒髪黒目〟なのに私よりも諺の知識が不正確なのだ・・・・・・」
完璧に呆れられてしまった。
非常に恥ずかしい。とんでもない醜態を晒してしまった。ともすれば痴態と言っても過言じゃないぞ・・・・・・、いや、いやいや、でもこんなものよくある勘違いと言う奴だろう。
と言うか黒髪黒目と何の関係があると言うのだ・・・・・・、あれ、そう言えばこれって、地球の・・・・・・、と言うか日本の諺だよな。
なんで行商人さんが知っているのだろう。
「・・・・・・、まあそんなことはどうでもいい。ええと、何の話だったか・・・・・・、そうそう、不死者が自殺するのは難しい、みたいな話だった」
「難しいかもしれないですけれど、私は頑張りますよ」
「努力の方向性をもう少し正すことをお勧めしよう」
優しく諭されてしまった。
冷静に解説され、完璧に呆れられ、優しく諭され・・・・・・、なんだ、この人、凄い『大人』って感じだ・・・・・・。あまり見ないタイプの人である。
「・・・・・・、まあいいさ。旅をするのであれば、また会うこともあるだろう」
行商人さんは、銀色のアタッシュケースをゆっくりと閉じて、また右手で持つ。
そしてゆらりとコートを翻して、私を追い越した。私はただ立ちすくむ。
「―――、それでは私は行くよ。次の商売があるのでね」
「・・・・・・、ええ、ありがとうございました。それでは―――、それでは、また」
「ああ、またいずれ会おう」
そうさらりと言って、行商人さんはゆっくりと仄暗い路地の先へと消えていく―――。
振り向くこともしなかったけれど、しかしまたいつか、なんとなく出会うことになる気がした。
ただの勘だけれど、それでもきっと多分。
この勘は間違っていないことだろう。
私も大通りへと向かうために、足を動かし始めた。
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