不死殺し

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獅子奮迅ならぬ死屍奮迅。 それこそが私の座右の銘である―――、嘘だけど。街中を歩きながら、そんなすげーどうでもいいことを考えていた。と言うか嘘だけど、って、誰に嘘を主張しているのだろう。 そして私は嘘をつくようなキャラクターだっただろうか。なにか混ざっている気がする。なんて思いながら、私は大通りを突き進む。 大通り。 こうしてお天道様の元を堂々と、白昼堂々と正々堂々と歩けると言うのは、なんと素晴らしいことなのだろう。 つい先ほど、生活用品の買い物を済ませ、(歯ブラシとか下着とかその辺一式。買ったものはバッグに詰め込んであるため、随分とぎゅうぎゅう詰めになっている)私は諸手をふってストリートを闊歩していた。 歩道―――、誰も私に奇異の視線を向けない。たまに黒髪黒目の所為なのか、珍しさのこもる視線を向けられることもあったが、それも稀である。 もっとも、まだ宿泊施設には行っていないから、行商人さんに頂いたこのローブの下は未だ血まみれのままである。しかし、そんな深淵を覗くような行為をする人間はそうそういない。 買い物も極々簡単に済ませ、私は道行く通行人の方に教えて頂いた、平民的宿泊施設へと―――、まあ民宿的なところへと向かっているところだった。 腰にはきちんと独絶丸もぶら下がっており、しかし足取りは軽い。 と言うか肉体的に疲労が起こらない身体なので、足取りは軽いままである。独絶丸はかなり軽い材質の刃物ではあるけれど、それをぶら下げて歩いているのに一向に疲れないのには、そう言う事情がある。 独絶丸に限らず、私の持っている鞄(元少年のものだけれど)にはかなりいろんな荷物が詰まっていて、重量もなかなかのものだ。 しかし疲労が蓄積されない私にとって、それは特別、不可逆的に厄介な問題、と言うわけでもなかった。 こればっかりは不死身体質に感謝である。 日用品の買い出しに、結構な額のお金を消費してしまったけれど、しかし問題ない。私はものを食べない―――、いや、多分食べることはできるけれど、食べずとも生きていける。 一体全体どう言う仕組みで私の身体は動いているのだろうか。 エネルギー保存の法則はどうした、と文句をつけたくなるけれど、実はあの真っ白な少女が自転車でも漕いで私の生きるためのエネルギーを補給してくれているのかもしれない。 ・・・・・・、いや、それは流石にたちの悪い冗句すぎるけれど。
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