不死殺し

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いやはや、しかし食費が掛からないと言うのは実にうれしい。その気になれば、未開の地へ引きこもって怪しげな研究を延々続けることも不可能ではないのだ。 多分その研究のベクトルは自殺へと向きっぱなしになるだろうけれど、しかしそれがどうした。 ・・・・・・、不死者を殺す自殺方法がもしも世界中旅しても見つからなかった場合、それもいいかもしれない。 無いのなら、作ってしまえ、自殺方。 ・・・・・・、いや、川柳にしている場合ではなく、でもそれって案外悪くない気もする。 問題はそんなことを考えることが出来るほど、私の頭がよろしくないと言う点であるが、しかしそれにしたって時間は腐るほどあるのだから、解決方法がないわけでもない。 ―――、などと未来について後ろ向きな空想を馳せていた私を吹き飛ばす衝撃が、不意に真横から襲ってきた。 暴虐を込めて煮詰めて埋めて投げたような、果てしない破壊音と、ギャリギャリと言う非常に耳障りな、金属と煉瓦がこすれ、破壊されるような爆音。 悲鳴、悲鳴、悲鳴―――、視界はぐらぐらブレブレぐるぐる―――、空が回る回る回る回る、頭がクルクル狂々、くらくら暗々―――、眼球が飛び出たと錯覚するような衝撃。 そして回っているのは空ではなく私だと気が付いた。大通りの煉瓦が敷き詰められた地面へと無様に叩きつけられ、ゴロゴロと回っている。 「・・・・・・、った、い」 ああ、ああー・・・・・・、っと。地面に伏せたまま、開きにくい瞼を無理やり開いて視界に収めた光景から、ようやく何が起こったのか理解できた。 私が先ほどまで闊歩していた歩道。そこに、車が突っ込んでいた。車―――、まあ馬の無い馬車みたいな形のそれだけれど、車に違いない。 どうやら車が突っ込んだそこに、ちょうど偶然突っ立っていた私が跳ね飛ばされた、と言う経緯のようだ。道理で物凄い衝撃だと思った・・・・・・、もしかして背骨とかバッキリいっていたんじゃないだろうか。 たぶん、今でこそ治っているけれど・・・・・・、く、まだ頭がくらくらする。なんて不運だ。 「・・・・・・、っ、と、とりあえず、起き上がろう・・・・・・」 と、私は起き上がろうと試みたけれど、起き上がることが出来ない。何故だ。疑問に思って身体を見分してみると―――、右脚がなかった。 おい、おい待て、右脚どこ行った。
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