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―――1年前。
当時21歳の伊綱鼎(イヅナ カナエ)は若くして警視庁特殊部隊であるSATの分隊長を務めていた。
女性でありながら、身体能力は他の隊員達と比べて群を抜いて優秀だった。
座学も常に上位枠に入っていた。
―――そんなエリート成績の彼女は、ある事件と出会う。
標的は一人の男。
捜査官が捜査の段階で作成したモンタージュでは、銀髪で長身、スタイルの整った体つき。顔は情報無しのため、なかなか特定することはできなかった。
だが、SATの本部にその標的の男の目撃情報が伝えられ、直後に都内の巨大ショッピングモールが武装集団に占拠されたという事件が発生。
まさに、標的の男が目撃された場所だった。
伊綱達SATの精鋭メンバーは現場に急行。
数名の小規模部隊をいくつか編成しての裏口攻めを決行するが、標的の男と対峙する際には伊綱を含む五名程しか残っていなかった。
人質とされていた買い物客達は無数の肉塊と化していた。
標的の男は伊綱を見ると、こう述べた。
「テッド・バンディを知っているかい?
彼は、この世界の死と生を支配したかったそうだ。僕は、ただそれを見習ってみただけに過ぎない。つまりこれもその過程の一つということさ。」
男はすぐさま姿を消した。
伊綱が最後に見た男の表情は屈託のない笑顔だった。
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