「ありがとう」って伝えたくて・・・

9/15
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
ただの励まし文句じゃない。 全力で彼の夢を応援したかった。 浴衣姿で志鎌さんの隣を歩く私。 彼は片付けを始めた露店に視線を向け、不意にカメラを楽市の屋台に向けた。 ―――カシャッ、カシャッ・・・―――――― カメラのシャッターが切られていく。 祭りの終わり。 今はまだ微熱を帯びているが、明日からこの通りはいつも通りの風景に戻る。 「雛乃ちゃん?」 不意に名前を呼ばれた。 そのまま彼の持つカメラは、楽市を背景としたまま私の姿を捉えて・・・―――――― 「可愛い・・・。」 ―――カシャ・・・―――――― 彼の口から零れた褒め言葉と同時に、カメラのシャッターの音が雑踏の騒音に交じり合う。 彼は私の姿を撮影し、そのまま穏やかな口調でこう言い残した。 「俺もあの楽市で活躍する職人さんたちのように、いつか立派なカメラマンになる。 その時は雛乃ちゃん、また君の姿を撮らせてもらえないか・・・?」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!