プロローグ

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「うわぁーん!」 泣き叫ぶ少女。 「・・・」 周りには数多の大人たち。 誰も彼女に手を差し伸べず、囲むように立って凝視している。 ただ冷酷に、ただ無情に。 まるで実験動物を観察しているかのような、そんな視線が彼女を射抜く。 さらに多くの大人たちがこの部屋を、外からマジックミラー越しに見ている。 そんな大勢がたった一人の少女を取り囲んでいる。 少女はまだ9歳の小学生だった。 しかし彼女は普通の子どもではない。 それゆえに、本来ならあり得ないこのような状況に置かれてしまっている。 彼女自身は幼すぎるから、まだその理由を理解していない。 ただ、たったひとりだけ、彼女に手を差し伸べるものがいた。 取り囲む大人たちの隙間を抜け、ゆっくりと彼女に歩み寄る。 「・・・え?」 涙ぐんだ彼女はゆっくりと顔を上げ、その少年を見る。 その目は明らかに恐怖の色を浮かべていた。 それを察した少年は、柔らかい笑顔を作った。 「ねぇ、僕と友達になろうよ」 彼女にとって、この世界で初めて自分の味方だと感じられる相手だった。 この出会いがすべての始まりであり、そしてこの二人は後に『呪われし兄妹』と称されるようになることを、このときはまだ知らない。
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