呪われし兄妹編

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家を出て15分ほどで「幽玄」に到着した。 「来たぞ」 ドアを開けて中で待っているであろう呼び出し主に声をかける。 「おお、来たか」 それに反応して迎えに出てくる男の名は幽玄意霧(ゆうげんいきり)。 このラボの局長にして、龍騎たちと同じ魔法を使える人間である。 「まぁ詳しい話は中でする」 龍騎に続き、奈々華も後に続く。 意霧以外にもたくさんの研究者たちが働いているが、龍騎たちに声をかけてくる者はいない。 皆一様に、二人の持つ魔法の力に恐怖している。 「で、今回の依頼は何?」 ふくれっ面の奈々華が意霧に問う。 奈々華はこの研究所自体かなり嫌っている。 かつて自身を研究対象として実験されたことを根に持っているのだ。 「そう怒るなよ、奈々華。お前らの生活費を負担してるのは俺だぞ?」 「はいはい、だからこうして来てあげてるんじゃない」 奈々華はラボに入ってからずっと龍騎の腕を抱きしめている。 そんな奈々華をなだめるために頭を撫でる。 「じゃあ、今回の依頼を説明するぞ」 龍騎と奈々華に親はいないし、二人は本当の兄妹ではない。 奈々華は魔法を開花させてから両親に気味悪がられ、捨てられたのちにこの研究所に引き取られた。 研究対象として扱われていた奈々華は、研究者だった父親に連れられて、遊びに来ていた龍騎と知り合った。 龍騎の母親は早くに他界しており、父親も数年前このラボで起こったある事件に巻き込まれ他界している。 そして残された二人は、奈々華が13歳になったのを契機に意霧から家をもらって二人暮らしをしている。 実際は二人がラボで研究者たちと一緒に住むことに、研究者たちの方が限界だったからだ。 奈々華は喜んでラボを出たので、龍騎も一緒に出た。 さらに生活費も意霧が負担しているわけだが、その代わりに龍騎たちはある「仕事」をしている。 「先週、隣の地区で火災事件が起きたのは知ってるか?」 「少しは。魔法が関係しているのか?」 「対象は16歳女子、名前は月島遊子(つきしまゆず)」 「他の情報は?」 「特にない」 意霧はいつも事件の簡単な詳細しか教えてくれない。 「変な先入観を持たせたくない」 苛立つ龍騎を前に、意霧はけろっと答える。 「はいはい、了解。様子見てくるよ」 立ち上がった龍騎に奈々華も付き従う。 「頼んだぞ、『魔法探偵』」 二人の仕事は魔法が原因の事件を調べる『魔法探偵』だ。
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