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二人はこの魔法に関する法則を無視した子どもである。
兄の龍騎は魔法を二種類持っている。
つまり龍騎は二つの感情によって魔法が開花した。
この例は他にはない。
そして妹の奈々華は魔法の開花した時、年齢がまだ9歳だった。
高校生の期間のみしか開花しないとされていた法則を見事に無視した。
そしてこの例もまた他にはない。
こういった理由から、ラボは二人を元に戻すすべを見いだせず、結果高校生卒業の年齢には達していないものの、ラボの職員として正式に雇っている。
そして魔法が開花することを、龍騎たちは『オーバースト』と称している。
「今回の事件、何の感情が原因なんだろうな」
「さぁ。推測は現場検証してからでしょ」
龍騎は比較的仕事に対してプラス的に動いているが、奈々華は龍騎以外の他人に興味なく、あくまで自分たちの生活を守るためにと考えている。
「ここだ」
現場に到着した。
無残な焼跡がそこにはあった。
魔法が原因と判明した場合、警察の介入はない。
そのため自由に捜査可能だった。
「これはひどいな」
「魔法系統はやっぱり『炎』かな。となると、感情は情熱とかかな」
「そうかもな」
魔法には系統がある。
それは原因となる感情には似たものがあり、似たような感情が原因となってオーバーストした場合、得る魔法の内容も似るのだ。
例えば、怒りや苛立ちといった感情が原因なら、実際の魔法には差があるが、魔法系統は基本的に『炎』のことが多い。
意霧は『疑い』の気持ちがオーバーストし、今は『探究探知(テリトリーサーチ)』の魔法を宿している。
事件に魔法が関与しているか、意霧が探究探知で調べている。
それを使えばもっと詳しいことは分かっているだろうが、いつも意霧は龍騎たちに必要最小限の情報しか与えない。
「火が強すぎたのか、ほとんど跡形もなく焼けてしまってるな」
「そうね。あんまり今回の魔法使いに関する情報もなさそう」
それでも根気よく焼跡をあさっていると、龍騎が何かを見つけた。
「これは・・・」
ケースに包まれた一枚の写真。
やや外が熱で溶けているが、中の写真は無事のようだ。
「家族かな?」
隣から奈々華が覗き込む。
四人が並び、笑顔で写っている。
「この子が今回の対象者だろうな」
奈々華が指をさす。
髪の長い、整った顔立ちの女の子がいた。
「四人家族だったのね。彼女の隣の子は弟かな」
「多分な」
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