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そこで、意霧からメールが届いた。
《焼けた家の中から父親と母親と思われる焼死体が発見された。ただ、対象者、それから弟の焼死体は見つからなかったそうだ》
「あいつ、やぱり四人家族ってのを知ってたのか」
意霧に文句を言っても仕方がない。
「魔法で使用者は死なないもんね」
魔法で自分自身が死んだ例はない。
「おそらく月島遊子、だっけ。彼女は生きている」
「でもなんで弟の遺体はないの?」
「彼女が持ち出したか?」
「何のために・・・」
まだ分からないことが多い。
龍騎たちはもう少し現場を調べることにした。
しばらくして、龍騎はとんでもないものを発見した。
「なっ・・・!」
地面から何かが出ている。
まぎれもなくそれは手だ。
「お兄、これってまさか・・・」
「おそらくな」
奈々華が言おうとしていることはすぐに察しがついた。
二人は地面を掘り返した。
出てきたのは変わり果てた男の子の遺体だった。
「弟だろうな」
「間違いないね」
後で意霧に調べてもらう方が確実だろうが、二人の中ではほぼ確信だった。
遺体には様々な傷があり、心臓が何かの刃物で射抜かれている。
「この傷は魔法のものじゃないね」
「おそらくな。彼は月島遊子の魔法ではなく、誰かに刺殺されてる」
「体に焼けたあとがないから、魔法の影響は一切受けてないのかな?」
「ってことは、魔法が使われたその瞬間にはもう死んでいて、地中に埋められていたってことか・・・?」
「なぜ・・・」
現場から理解できるのはここまでが限界だった。
龍騎たちはひとまず意霧を呼んで、弟の遺体を搬送してもらった。
「これからどうするんだ?」
駆け付けた意霧が部下の研究員に遺体を搬送させている間、二人の元に来た。
相変わらず奈々華は意霧に嫌悪全開の視線を向けて黙ったままだ。
「現場の情報は限界だ。月島遊子の知り合いに話を聞いて回るつもりだけど」
龍騎がその後に続けようとする言葉を察し、意霧が口を開く。
「はい、これが彼女の知り合いのリスト。載ってるのは名前、住所、彼女との関係性だからね」
「ムカつくくらい準備がいいな」
意霧が差し出した紙を奪うように龍騎は受け取った。
龍騎のそんな様子に無関心といったように、意霧は表情を変えず、笑顔のまま続けた。
「気を付けてな」
「分かってるよ」
その場を去る二人の後姿を、意霧は真剣な眼差しで見つめていた。
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