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とあるマンションの一室、龍騎たちは一人の女の子の元を訪れていた。
意霧から受け取った紙の一番上に載っていた彼女、明石夢乃(あかしゆめの)は今回の中心人物、月島遊子の親友である。
「こんにちは。明石夢乃さんで間違いないですか?」
意霧の情報が間違っていたことはないが、念のため確認しておく。
「そうですけど、誰ですか?」
彼女は訝しげに龍騎を見る。
めんどくさがった奈々華はマンションの一階ロビーで待っているため、今は龍騎一人だ。
見知らぬ人が自分を訪ねてきたら不審がるのも無理はない。
「はじめまして、俺はこういうものです」
魔法探偵として調査するとき、意霧から持たされている警察手帳を見せている。
これを見せることで公的に調査しやすくなるからだ。
もちろん偽装品だが。
「け、警察!?」
驚きを見せる夢乃。
おかまいなしに龍騎は続ける。
「貴女の友人である月島遊子さん宅が火災に見舞われたのをご存知ですか?」
「ええ、まぁ。それで警察が何でうちに・・・」
「遊子さんの行方が分からなくなっています。何か心当たりは?」
「・・・わかりません。私には何の連絡もありませんから」
夢乃はきっぱりと言い放った。
「昨日学校には?」
「来ていません」
「一昨日は?」
「来ていません・・・」
その時、龍騎は夢乃の背後、部屋の中で何かが動いたのを見逃さなかった。
ゆっくりと下を見ると、明らかに彼女のものではない靴がある。
「中に入らせてもらってもよろしいですか?」
刹那、夢乃の表情が変わる。
「だ、だめっ!」
強い拒絶を示した。
この時点で、龍騎は中に月島遊子がいることを確信した。
ただここで深追いしてしまうと、室内で対面した時に遊子の魔法が発動され、夢乃の部屋が燃えてしまうのが懸念された。
最悪マンション全体の火災ともなりかねない。
いったん龍騎は退くことにした。
「そうですか、失礼しました。女性であれば、他人には見せたくないものもあるでしょうね」
追及がなかったことに安堵した夢乃はほっとする。
「そ、そうなんですよ」
にこりと笑顔を作った彼女に対し、龍騎もまた笑顔を作る。
「例えば、かくまっている親友とか」
「・・・!」
核心を突かれ、たやすく表情に出る。
完全に確信に至った龍騎は、一礼してその場を去った。
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