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「先生、彼女いないの?」
あたし達以外には誰もいない放課後の教室は、窓の外から部活動の掛け声が聞こえてくるほど静かだった。
夕方と言える時間帯だけどまだ日も高く、夏はもうそこまで来ているのだと実感できる。
そして、この静寂を破ったあたしを、教卓に腰掛けた20代の数学教師が「はぁ?」と言いながら怪訝そうな目で見つめている。
「だからさ、彼女! 光野(ミツノ)先生の!」
「何言ってんだよ。そんなことはどうでもいいから、さっさと追試終わらせろ」
どうでもいいことだったらあたしだって聞いていない。意味があるから言ってるに決まってんじゃん。
だけど今そんな憎まれ口を叩いて先生を不機嫌にさせてしまったら元も子もないので、その言葉はひとまず飲み込むことにした。
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