高校物語 -先生とあたしのナイショの時間-

01. 追試

「だったら黙って解け！」

もう何も言うなと言わんばかりの目でじろりと睨みつけられてしまった。

……ちぇっ、やっぱりダメか。

机に広げられた白い紙に目をやると、暗号のような記号や数字がいくつも連ねられている。

おそらく公式さえ覚えておけば解ける問題。だけど残念ながら、あたしには覚える気がちっともないからどうしようもない。

サインコサインタンジェント。
こんな呪文みたいなもの覚えて一体何の役に立つというのだろう。

そんなの覚える時間があったら雑誌を読みたいし、ドラマを見たい。ネットの口コミを読んでコスメの新商品の情報を手に入れたい。

定期試験で赤点を取ると後々面倒なことになるから、そこはきちんと押さえておくけど。

でもそれ以外の、たかだかこんな小テストのために大切な時間を割くほどあたしは暇じゃない。