雫一滴:日常茶飯事

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でもそれは、学校でだけでの立ち位置である。 なぜなら、 「お帰りなさいませ、お嬢様」 家に帰れば、美雨はお姫様―…いや、お嬢様と呼ばれている。 「今日も暑い真夏日でございましたねぇ!お嬢様、先にシャワーを浴びられては如何ですか?」 そう言って来るのは、家政婦。 名前は杏子(あんこ)という。 「えぇ、そうするわ」 美雨の家は、世間からは『資産家』と呼ばれる一族である。俗に言う”大金持ち”だ。 彼女はそんなこの一族で、一人娘にあたる。 家の造りも普通の家とは かなり並外れており、ディズニーランドの一部のよう。豪邸を紹介する雑誌に取り上げられたこともあるくらいだ。 庭にはプール。噴水。室内にもミニ滝がある。 何かと水周りの多い造りだった。 雨の日以外のダイニングの天井は、屋根が動いて吹き抜けになっていたりする。美雨はいつも、そこから流れ込んで来る風を感じていた。 季節は五月の半ばという事もあり、最近の風は初夏らしく、生暖かかった。
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