~世に言う臭い仲(´A`|||)~

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~世に言う臭い仲(´A`|||)~

「ほ…本気でございますか、影千代(かげちよ)さま?」 「ああ、私は金丸どのの村で暮らす。我に仕えし皆の任を既に解いた。残るはそなたのみだ。今より我が影武者の任を解く。そなたは…一茶(いっさ)は自分の思い描く通り、好きに生きよ」 私がお仕えする蠍一族黒蠍国第5王子、ダイオウサソリ・影千代さまは、武術・知性・風貌…あらゆる面からも黒蠍国を背負って立つに一番相応しい御方だ。 なのに、あろうことかキングバブーンの金頭の毒蜘蛛の姿絵に一目惚れし、ついには黒蠍国を捨てド田舎の土蜘蛛一族が隠れ里の手前まで来てしまった。 嘆かわしいことだが、影千代さまがお決めになったこと故、従わざるを得ず、私までここまでお供してまいった。 城門の片隅でハサミ磨きの仕事をしていた齢5つの折、時の左大臣どのが何日も前から私を観察し、ある日、私の手を引き中へと連れて行った。 私を一目見た国王は『うむっ…』と頷くと、そのまま両親を呼び、その場で私を息子である影千代さまの影武者の任を任せたいと望んで下されたのだ。 その日より今日まで15年、私は私なりに精一杯お仕えしてきたと思う。 所作や癖を叩き込み、ご兄弟のどなたの影武者達よりも寸分違わぬ域にまでたどり着いていると、国王よりお褒めのお言葉までいただいた。 だが私は、なにも苦痛には感じなかったから出来たのかもしれない。 影千代さまの分け隔てないお優しい心、類まれな頭脳と能力に、おなごでなくとも強く憧れ惹かれ、心中にて何年もお慕い申し上げてきた。 誰よりもお側近くでいることができる悦びと幸運を手に入れ、私は誇りを持ってお仕えしてきたのだ。 そのうえ、我が国ではあまり身分が高くない我がチャグロサソリの親族一党の期待の存在であったと言うのに… 「お…断りいたします。私の命は、既に5つが時より、影千代さまに捧げております。影千代さまという光があってこそ、影の私が存在致します。どうしても離れろと仰るのでございましたら…今すぐ我が命を…影千代さまのお手にかかり天に召されるなど、本望でございます」
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