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妹が退院して何年かたったとき。
なつの海。
ワクワクしながら砂浜の上にたった。
横を父と妹がかけ抜けていく。
あなたもいってらっしゃいよ、と
幼い方の妹を抱いた母の目がいう。
仕方無しにあとを追いかける。
砂浜を掘る。ほる。
父は一番幼かった。
山ができていく。
いびつな形だけど、でかい。
じゃあいくかー。
妹と父が海へ入っていく。
そこでまってな、といわれたからまっていた。
あっという間に二人は遠くにいた。
海を眺める。ゆったりと波がよってきて、せかせかと戻っていく。
たのしい。
おーい。
ひゅん。
父の声と、何かが飛んでくる音。
くらげ。
くらげがとんできた。
そこのやまにかざってと、父が手振りで伝えてくる。
飛んでくるくらげ。
くらげ。
くらげを拾っては山にのせ、拾っては山にのせ。
キャッチできないの、と妹の声。
空を舞うくらげ。
くらげ。
しばらくして満足したらしい二人が戻ってきた。
もう戻ろう、といって待っている母と幼い方の妹のところへいった。
着替えを終えて、駐車場から、くらげ山の方を見る。
父が満足そうに笑っている。
しばらくながめていると、
大きな波が。
もっと砂浜側に作ればよかったとつぶやく父。
よくやった、波。
父以外の皆が思った。
赤く染まった空と海に背をむけて、うちへ帰る。
昔のはなし。
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