つばめ

2/2
前へ
/27ページ
次へ
昔のはなし。 夏のはじまりのこと。 隣のマンションの駐車場に 毎年、毎年つばめの夫婦が巣をつくりにやってきた。 大人がいうには つばめはとっても一途なんだって。 多くのとりは、毎年違うお嫁さんと違う場所に巣をつくるんだけど、 つばめは違うんだって、 おんなじ場所におんなじ夫婦で巣を作るんだって。 だけど?だから? 毎年、毎年巣は壊された。 人間がこわすんだ。 マンションの駐車場には車があって。 車が汚れるから。 それでも巣をつくりにきてたんだ。 毎日、毎日 学校帰りに友達と 隣のマンションの駐車場を覗いて かわいいねぇって笑顔になって。 これは、昔のはなし。 ある夏のはじまりのこと。 私はランドセルを背負って。 つばめがぐるぐる とびまわってるのをみた。 くるったようになきながら。 駐車場のなかと、電信柱を いったりきたりしていた。 巣のあったところをみた。 家に帰って母に教えてもらった。 自然と人間っていうのは 反対の方向を向いてるんだって。 仕方ないことなんだって。 人間と自然がどっちもある程度満足できるような、妥協点を探すんだって。 そうなんだ、知らなかった。 その夜、ベッドにはいってから、ふいになみだがでてきた。 毎年、毎年 夏のはじまりになると。 隣のマンションの駐車場を覗く。 特になにもない。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加