終章

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ミャーコは猛がいなくて、ホッとしてると思うけどね。 「じゃあ、龍吾さん、町まで送ってくださいよ」 「送っ……そんな、さびしいことを……まあ、送るけど」 その夜は遅くまで飲ませられた。 蘭さんは水魚さんをさがしてたみたいだけど、祭が終わったからだろう。 水魚さんの姿は見えなかった。 翌朝、僕ら三人は、村の人たちに見送られて、藤村をあとにした。 安藤くん、池野くん、大西くん、田村くん。 それに、香名さん。 みんな、なごりおしげに手をふった。 やっぱり、水魚さんは来てなかった。 「また来てくださいね。かならずですよ」 香名さんの涙が胸に刺さる。 香名さんは、また、あの家で一人、暮らすのか。 一人で住むには、あの家は暗すぎる。 「香名さんは、水魚さんと兄妹なんでしょ? なんで、いっしょに暮らさないんだろう」 赤いオープンカーのなかで、僕は誰にともなく、つぶやいた。 「そりゃあ、研究所に二人の関係、知られたら、妹も実験材料にされるじゃないか」 まがりくねった山道に、危なげなくオープンカーを走らせながら、龍吾が言った。 「なるほど。たしかに」 「水魚と茜が、矢面に立ってくれたから、おれたち村民は秘密を知られることなく平穏な暮らしを続けてられた。 だから、あいつが言いだした計画に、おれたちは乗ったんだ。 あいつだけ鬼神にしてられないじゃないか」 僕のとなりで、猛が問いかける。 ちなみに、蘭さんは助手席。 「あんたは神主という立場で、御子のこと知ってたから、計画にくわわった。 落合さんが殺されたあと、現場に落ちてたスタンガンをひろったり、クツと偽造遺書を川辺に置いといたりしたの、あんただよな? そして遺体を見つけたとき、クツをぬがせておいて、自殺に見せかけた。 いっしょに死体の捜索してた青年団の連中は、変に思ったかもしれないが、あんたのやることに文句言うやつは、一人もいない」 ああ、あのときウロウロしてた、ほんとの理由は、それか。 「そう。水魚といっしょに、あずさの死体をバラしたのも、おれ。 あずさを殺したって、美咲が青い顔で帰ってきてさ。 夜中に池野や大西、呼びだせないだろ。 おれなら、別棟から、例の地下通路使って、誰にも見られずに社へ行ける。 あとで蘭さんが指輪なくしたって、池野から聞いて、あせったけど」
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