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ん、まあ、たしかに。
どうせ食べるなら、美しい人の肉のほうが、おいしそうな気はする。
「そうですか? かーくんだって女の子みたいで(蘭さんに言われたくない……)、かなり、おいしそうですよ」
蘭さんは麗しいおもてに、美人にあるまじき邪悪な笑みを浮かべる。ニヤッとね。
この人は、こういう話題、ツボなのだ。じゃないと著作にも書かないか。
「どうせだから、三人で食べっこすればいいじゃないですか。猛さんの肉は硬そうだけど、体が大きいから、食いではある」
な……生々しいなあ。
「だいたい、どんな状況で難破するかにもよりますけど、人間って飲み水さえあれば、けっこう生きていられるんですよ。
海なら飲み水は海水を飲めばいいわけです」
「ちょっと待った。海水って飲んじゃいけないんじゃないの?」
「大量に飲むと、血中の塩分濃度が上がって、幻覚が見えたりしますけど、少量なら大丈夫。
飲めないってのは、デマです。
前に、海水だけ飲んでヨットで航海した、どっかの教授、ニュースで見ました」
ほんと、蘭さんは、こういう、ちょっと変なこと、いろいろ知ってるなあ。
「だから、飲み水はある。それなら食べなくても二、三ヶ月は生きてられる。おたがいの肉を食べあうのは、そのあとですよね。
できれば文明社会に帰ってきたとき、あまり精神的打撃を受けていたくないですから、いちおう、ギリギリまで粘ったことにしとかないと」
いちおうって……。
「それで、いよいよとなったらジャンケンです。順番を決めて、足か腕を一本ずつ食べていくことにしましょう。
止血さえしておけば、人間、手足の一本や二本で死にやしません。
僕的には両手そろってないと、キーボード打てないので、差しだすなら足ですよね。
足のほうが肉も多いですし、膝下、大腿部と、二回にわけて食べられるでしょ?
週一回のペースなら、三人で、かなりの長期、生きていけると思うんですよ」
蘭さんの熱心さに、僕と猛は正直、ひいていた。
なんか蘭さん、難破しなくても、人肉、食べたそうに見えるよ。
「まあ、そうだな。いざってときには、そのくらいの覚悟はいるのかもな。
手足を失えば、その後の生活に支障はきたすが、死ぬよりマシか」
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